作品名 | アーサー・ウェルズリー(後のウェリントン公爵)のシャトレーヌ・ウォッチ |
制作年 | 1809年頃 |
制作国 | イギリス |
制作者 | 未詳 |
素材 | エナメル、ダイヤモンド、シルバー、ゴールド |
19世紀初期のイエロー・ゴールドとダイヤモンド、ギヨシェ・エナメルのシャトレーヌは、そのフック・プレートのトップとミドルがオーヴァルとレクタンギュラーのプラークでカバーされており、その双方ともにダイヤモンドをセットした縁飾りに至る2個の小さ目のオールド・カット・ダイヤモンドの間に1個のオールド・ブリリアント・カット・ダイヤモンドがセットされ、ブルー・エナメルが施されている。これを切り離す同じようにブルー・エナメルが施された2つのスクエアおよびサークルのセクションは、それぞれセンターにセットされた1個のオールド・カット・ブリリアント・カット・ダイヤモンドをホワイト・エナメルの縁飾りが囲み、先端はダイヤモンドをセットしたスウィーヴル(転鐶)になっている。プラークに提げられているコレット・セットのオールド・カット・ダイヤモンドのチェーンは、先端がペア・シェイプのエレメントになっており、それぞれにオールド・カット・ダイヤモンドがセットされてブルー・エナメルと外側のホワイト・エナメルの縁飾りがそれを囲むとともに、ペアのダイヤモンド・タッセルとモノグラムのAWが彫られたカルセドニーのシール、1個のウォッチ・キーおよびウォッチを吊り下げている。ダイヤモンドがセットされた提げ鐶付のウォッチ・ケースは、センターにダイヤモンドのモノグラムAWがダイヤモンドをセットした 縁飾りに囲まれたブルーの地の上に配されている。ダイヤモンドをセットした縁飾りの付いたホワイト・ダイヤルは、アラビア数字が振られるとともにダイヤモンドをセットした長短針を備えている。内側に取り付けられたベルが1個ある。
ウォッチ・ケースに刻印されているジョナー・ミンスを指すIMは、1809年に商標登録されたもので、ロンドンのジェフリー・アンド・ジョーンズによって販売されたもの。
ロード・サンドバーグ、参照はT.カメラー・カス著『ザ・サンドバーグ・ウォッチ・コレクション』(1998年刊)no.126で、AWのモノグラムを後のウェリントン公爵アーサー・ウェルズリーと関連付けている。
このイギリス製ジュエリーの素晴らしい実例は、幾何学シェイプを伴うシンメトリーなフォルムのもので、18世紀の最後の10年間に建築およびインテリア装飾に導入された新古典主義の影響を反映している。このスタイルの古典的な厳格さは、チェーンに提げられたものとダーク・ブルーのエナメルの空を背景に輝いているもの、双方の夥しい量のダイヤモンドによって和らげられている。このウォッチはサイズは大きいが、薄くフラットで、このシャトレーヌの優雅さとマッチしている。このジェフリー・アンド・ジョーンズ社はチャリング・クロスに近いコックスパー・ストリートで創業し、イギリスの貴族階級の愛顧を受けた。1786年にロンドンを訪れたゾフィー・フォン・ラ・ロッシュも同様で、同社のジュエリーは「ひとつの発明の才とほぼ過去の想像力である技量」を見せるものであると公言した。
S. フォン・ラ・ロッシュ著『1786年ロンドンのゾフィー:現行ゾフィー・フォン・ラ・ロッシュの日記』(1933年刊)221ページ参照。