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ジュリアーノによるブラック・アンド・ホワイト エナメルスイート

作品名 ジュリアーノによるブラック・アンド・ホワイト
エナメルスイート
制作年 1900年頃
制作国 イギリス
制作者 ジュリアーノ
素材 エナメル、パール、ダイヤモンド、ゴールド

作品説明

ゴールドとシルバー、ダイヤモンド、パール、不透明のブラック・アンド・ホワイト・エナメルのスイートは、ネックレスおよびそれとマッチしたブレスレットで構成されている。ネックレスは、センターに枝分かれしたスクロールを両サイドに添えた様式化された葉のトレイル(枝垂れた様子の葉飾り)が配されており、その上に、ハート・シェイプの葉を冠した5個のブリリアント・カット・ダイヤモンドを載せたスワッグが配され、その先端には3個のドロップ・シェイプのパールが3つの尖ったモティーフから提げられている。それらのモティーフは、それぞれ2個のダイヤモンドをセットするとともに、同じようにエナメルを施し、先端に3個のドロップ・シェイプのパールを提げた小さ目のモティーフと交互に配されている。蝶番式のオープンワークのブレスレットは、7個のスクエア・シェイプのリンクで構成されており、それらはそれぞれ興味深い曲線および直線ラインのブラック・アンド・ホワイト・エナメルのパターンを両サイドに添えたブリリアント・カット・ダイヤモンドのクロスによって、さらにホワイト・ドットを施した細いブラックのラインの間のホワイト地の上のブラックのシェブロン(山形紋)によって4つのセクションに分割されている。モロッコ・レザーのボックスの内側には、金彩でロイヤル・クラウンの下にC. GIULIANO, 115 PICCADILLY, LONDONと押印されている。カルロ・アンド・アーサー・ジュリアーノ製作、ロンドン。

解説

この重要なスイートは、ジュリアーノ社によるゴールドスミスの技術の熟練を要約している。同社は1895年から1914年まで、カルロ・アンド・アーサー・ジュリアーノのマネージメントの下に、ピカデリー115番地に本拠を構えていた。エナメル技術のクォリティは目覚しいが、ネックレスとブレスレットの両者のすべてのエレメントに施されたチェイシングも同様であることは、滑らかに研磨された裏側にはっきりと見て取れる。イタリア人の創立者、カルロ・ジュリアーノ(1835-1895)は自らによるこれらの技術の復活で名を成したが、このケースでは、パールとダイヤモンドを引き立てて見せるために、17世紀のジュエラーによって考案された落ち着いたブラック・アンド・ホワイトの不透明エナメルの採用によるものである。ここでは、複雑ながら秩序だったオープンワーク・パターンがダイヤモンドの慎ましいきらめきとパールのソフトでシルバーがかった光沢が、世紀の変わり目の頃のロンドンにおける“フル・ドレス”(盛装)のフォーマル・イヴェントで着用されるべくデザインされたスイートの中で組み合わされている。この精緻なネックレスは、ファッショナブルなイヴニング・ガウンのロー・カットのネックラインを埋めて着用する女性の白い大理石のような肌を強調したものであり、またこの幅広のブレスレットは彼女の腕を覆う白いロング・グラブの上で際立ったものである。もうひとつのブラック・アンド・ホワイトのエナメルを施したネックレスについては、G. マン著『カステラーニとジュリアーノ』(1984年、ロンドン刊)pl. 139を参照のこと。それには、アート・ジュエラー、ゴールドスミス、シルバースミスおよびダイヤモンド商会 C&Aジュリアーノのショップよりの1900年付の請求書が添付されている。社名に冠されたロイヤル・クラウンは、ヴィクトリア女王の愛顧および彼女の息子のエドワード7世と彼の妻のアレキサンドラ王妃の愛顧を示している。ジュリアーノの紛れないヒストリカル・スタイルが芸術趣味を具えた裕福な女性たちにアピールしたように、このスイートはロンドンの知識階級の一員によって製作依頼されたものと思われるが、その当人は自らの個性を表現したいと望み、またそれゆえに主流のロンドンのジュエリー・ハウスを連想させる、因習的なダイヤモンド・ジュエリーとは異なる何かを要求したのである。

ダイアナ・スカリスブリック