作品名 | スワン ペンダント |
制作年 | 1910年頃 |
制作国 | フランス |
制作者 | ショーメ |
素材 | プラチナ、ダイヤモンド、エナメル |
プラチナミルグレインのディスク(円盤)に、白鳥が水面に浮かぶ情景が表現されている。壺が載った円柱の間には三つの噴水があり、右手上方には木の枝が覆いかぶさっている。日没の空は金色の地平線の上に青い影のように溶け込み、水面は緑、大理石の石畳はグレーがかった黒のエナメルで表現されている。この情景をひときわ輝かせるダイヤモンドの使い方は、円盤を取り巻いたダイヤモンドと共鳴し相乗効果をあげている。ブローチまたはペンダントとして使用できる。
このペンダントのデザインは、他の同様に地形学的なデザインと共にショーメの記録に残されているが、商品として実際に店頭を飾ったのはこの一点だけであると思われる。このことはエナメルと複雑なセッティングのダイヤモンドとの組み合わせという技術の難しさの所以なのかもしれない。噴水を含むクラシカルでエレガントな情景は、ベルサイユ宮殿のトリアノン庭園を思わせ、エナメルとダイヤモンドの組合せも18世紀的である。白鳥は音楽の神であるアポロと愛の女神ヴィーナスとも関連があり、音楽と愛のシンボルとされている。
したがってこの作品は、音楽と愛の力によってもたらされる「signe de bonheur(=幸福のシンボル)」として用いられたと思われる。(※signeは仏語の白鳥を意味するcygneと同じ発音である)ブローチとして上着に付けられたり、シルクの紐、チェーン、パールで作ったリボンなどに提げられた。
ダイヤモンドの輝きとミニアチュールの絵画のようなエナメルのやわらかな色彩は、ルイ16世とマリー・アントワネットの時代を思い起させる。それは20世紀初頭の富裕層にとって、優雅な生活の理想を象徴するものだった。