作品名 | トートの小像 |
制作年 | 紀元前664~525頃 |
制作国 | エジプト |
素材 | 未詳 |
サイズ | H63mm, W24mm, D41mm |
グリーンの上薬をかけたトートの小像の作品は類人猿の性格をしており、鬘を被り、円柱に束ねられた2つのヤシの葉枝の前のバスケットの上に坐っている。エジプト製、サイス王朝期。
古代エジプトで崇拝されていた数多くの神々の中でも、トートは科学と読み書きの発明者、あらゆる過去と未来の秘密の守護者、死者の援護者、善悪の判定者、法律の支給者として極めて特別な地位を占めている。ここでは、トートは彼に捧げられた動物、類人猿として表現されているが、彼が結び付けられているヤシの葉枝が年月の象徴であることから時を計っている。この結び付きのゆえに、E. リーフスタールは『古代エジプトのガラスとガラス釉』(1968年、ブルックリン刊)no. 68において、このフィギュアは水時計のためにデザインされたものに由来する可能性があると指摘した。J. カパール著『エジプトの水時計』エジプト年代記12、1937年刊、47-48ページ参照。このポーズはエジプト美術の線画に似ているが、また同じく文字を記す神の象徴としてのトートを表わしているとも考えられるが、それは死者の口から発せられる「我にインク壷とパレットを持ち来たれ」という呪文を繰り返すものである。トートの筆記具と秘密は、『死者の書』(94年刊)以来それらに所属するものである。エジプト彫刻の長い伝統に属しているように、この小奇麗でコンパクトな、見事に象形化された小像は、類人猿の神の物思わしげで賢い性格を捉えることに成功している。