作品名 | ニンフのカメオ ブローチ |
制作年 | 1898年-1899年頃 |
制作国 | フランス |
制作者 | ルネ・ラリック |
素材 | ゴールド、象牙を模した人造素材、ダイヤモンド、プリカジュールエナメル |
5人のニンフが手を繋いで輪になり、軽やかなひだが動きに合わせて翻る様子を描いた長方形のゴールドのプラーク。ほのかな淡いブルーに色着けした地に、ニンフの像が浮き上がる様に描かれている。ローズカットダイヤモンドが縁を飾り、四隅にはダークブルーのプリカジュールエナメルでできたやどり木をあしらったゴールドのモティーフを配している。
ブローチに加工されたこのプラークは、アール・ヌーヴォーと呼ばれるモダンなスタイルの一例を示している。その代表的な天才作家、ルネ・ラリックは、19世紀末ベル・エポックの頃、伝統的なダイヤモンドに代わる宝飾品を提案した。この作品は18世紀の芸術の流れを汲んでいるが、ラリックは自然世界からインスピレーションを受けた、伝統に縛られないデザインを創造した。彼が好んだ植物のひとつであるやどり木をこの作品では四隅のデザインに取り入れ、主題に人物像を描いている。ルネサンス期にそうであったように、この作品でも使われた宝石よりも、製作に要した技術の方に価値がおかれている。彼が使用したホワイトゴールド、イエローゴールド、ローズカットダイヤモンド、エナメル、アイボリーなどには実質的な素材価値はほとんどない。彼がこのような装飾品を製作した時期は短く、1904年以降はクリスタルやガラスの製作に移行している。
ラリックの宝飾品全てに共通するが、美しい装飾品であると同時に芸術品であり、作品に描かれた場面は喜びであふれている。若さと幸福感の輝く優雅なニンフたちは、踊りの音楽にうっとりと我を忘れており、ラリックの最も好んだ題材 – すなわち手足がほっそりと長く、長い髪をなびかせた、若く美しい女性像を、あえて高価な素材を使わず彫刻的に表現している。