作品名 | 14世紀 ゴールドとエナメルのクロスペンダント |
制作年 | 14世紀後期 |
制作国 | イギリス |
制作者 | 未詳 |
素材 | エナメル、ゴールド |
ゴールドのリリカリー(聖骨収納器付きの)ラテン・クロスは、前面にキリスト像が彫られている。彼の腕と足は、枝垂れた花々の中にJESUS NAZARENUM JUDAEOROM(ユダヤ人たちの王ナザレのキリスト)を意味するINRIの黒字の銘刻が冠されたクロスに釘で打ち付けられているかのように見える。裏側は黒字でespour de sy sans fyn(終わりなくあなたを欲します)との宣言が、同じく花々の中に銘刻されている。グリーンおよびホワイト・エナメルの痕跡が残る。
このリリカリー・クロスの裏側に銘刻されているキリスト教の教祖イエス・キリストへの帰依の宣言は、中世の教会と大聖堂の建物に帰結する信仰心を反響させている。加えて、両面の上の花の装飾は、その他の形態の中世のアートに表現された、深く根差した自然への愛によってインスピレーションを受けたものである。洗礼のしるしとして着用されたこのクロスは、グロチェスター公爵夫人エレノアによって実証されている如く日常的に身に着けて愛しまれたもので、彼女は1399年に息子のヘンリーに“十字架上の像とその回りにセットした4個のパールを伴う、チェーンから垂らしたクロス”を“わが最愛の所有物として、祝福の祈りとともに”遺贈した。R.ライトボーン著『中世ヨーロッパのジュエリー』(1992年ヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム刊)203ページを参照のこと。