アール・デコとは、1925年のパリ万博に出品された装飾美術品群を総括して約半世紀後に同万博の名称から付けられたスタイルを指す。ヨーロッパ的伝統から離れることが出展許諾の判断基準であったことから、モダンかつ未来的なデザインからエジプトやインド、中国、日本さらに南アメリカまで、エキゾティックなモティーフが要素として採用された。ジュエリーでは、次第にラインのシンプルさとシンメトリーな平面構成、幾何学的なラインを高めつつあったガーランド・スタイルが先駆の役割を演じたと言える。そうした移行期のジュエリーは、かつてのガーランド・スタイルのオール・ホワイトへの反動からブラック・アンド・ホワイトへと色彩の変化を見せていた。最終的にアール・デコに至ると、ロシア・バレエやフォヴィズムの影響を受けてカラフルさが増大し、インドからの彫刻を施した宝石を用いたトゥッティ・フルッティの極彩色の立体的デザインも見られるようになった。