アーツ・アンド・クラフツとは、イギリスの美術評論家ジョン・ラスキンが唱え、デザイナーのウィリアム・モリスによって1861年頃から実践された芸術ムーヴメントを指す。機械による量産や分業を否定し、中世の職人ギルドに倣って一人の職人がすべての工程を行う手作業を理想とする復古主義のひとつである。日本美術発見によってインスピレーションを得た側面もあり、フランスのアール・ヌーヴォーにも影響を与えたことから、そのイギリス的な局面ともされる。ジュエリーでは、イギリスのC. R. アシュビーのものがその代表例である。ロンドン留学でその薫陶を受けたルネ・ラリックがフランスで創始したスタイルがアール・ヌーヴォーで、19世紀末から20世紀初頭にかけて一世を風靡した。自然がテーマの流れるような曲線を特徴とし、日本美術の影響を色濃く反映したジュエリーは動植物、時には女性像がアシメトリーな構成で立体的に表現され、エナメルが多用された。