文明発祥の地メソポタミアにおいて、ゴールドの加工技術は紀元前3000年紀にかなりのレベルに達した。様々な鍛造技法によるシート状のゴールドの成型を始め、環と環を絡ませて連ねたループ・イン・ループ・チェーン、細いワイヤーを貼り付けてパターンを描くフィリグリー(繊状細工)や微小な球体を使うグラニュレーションの技術も開発されている。硬度の低い石に彫った動物の小像の裏側に文字や図像を彫り込んだスタンプ・シールと、その進化形の転がして押印するシリンダー・シールもメソポタミア起源である。それらはすぐにエジプトに伝わるが、そこでの独自性は色石の象嵌による目覚ましい多色性にあった。また古代の神々と深くかかわるエジプト起源のモティーフは、他の古代文明のジュエリーにも大きな影響を与える。メソポタミアに逆輸入されたエジプト起源のスカラベは、裏側にシールを刻印して回転ベゼルにセットしたリングに発展し、インタリオとカメオへと進化した。