考古学的発見やグランド・ツアーを契機として18世紀中頃から19世紀初期にヨーロッパ、アメリカで趨勢となった新古典主義は、ギリシャ・ローマの古典芸術を規範とした明快で完成度の高い表現を特徴とした。ロココの官能性や通俗性を論理的かつ厳粛な啓蒙的性格に置き換えようとの意図から、為政者たちの公的な美術様式といった側面もある。ジュエリーでは月桂樹やグリーク・キー、フェストゥーン、スワッグといった古典のモティーフが多用された。ナポレオンが権力を掌握してから流刑に処された1815年のやや後まで展開された新古典主義の最終局面を、“アンピール”(エンパイア・スタイル)と言う。新古典よりさらに厳格に古典を踏襲しつつ、古代ローマの栄光を復活させるべく軍事的モティーフやエジプト遠征に由来するファラオ時代のモティーフを加える。ティアラの復活や大型のパリュールの登場、カメオやインタリオの復活により全ヨーロッパの宮廷を席巻した。