西ローマ帝国滅亡からほぼ一千年を経て、15世紀イタリアにおいて文化芸術が古代ローマの高みに達する復活を果たしたのがルネサンスである。ジュエリーには古代ギリシャ・ローマの古典文化が色濃く反映され、美術や建築、神話や初期キリスト教の象徴的なモティーフをテーマとしたシンメトリーなデザインが主流となった。様々なアイテムの中でも、特にペンダントはミニチュアの芸術作品と考えられ、リングにおいてもフープとショルダー、ベゼルの各部が極めて立体的かつ彫刻的にデザインされ、各部が独立した完成度を見せつつも調和したひとつの全体として構成された。こうした古典以来の秩序と厳格さ、対称性は16世紀後半にその枠組みを逸脱し始め、創造性よりは定型的、過度に技巧的な、バロックの情動的表現に至る過渡的な様式として、マニエリスムが生まれる。この時代を代表するゴールドスミスで彫刻家でもあったのが、かのベンベヌート・チェリーニである。