用語集

デプレ、ジャン【ジュエラー/メゾン】

Desprès, Jean

アーティスト・ジュエラーに限定されたサークルの大人物ジャン・ユジェーヌ・ジルベール・デプレ(1889-1980)は、ブルゴーニュの小さな町でジュエリーと贈答品を商う両親の許に生まれ、16歳でパリに出て父親の友人のゴールドスミスのアトリエで徒弟修業に入るとともに夜間のデッサン・コースに通った。時間が空くとモンマルトルに上り、そこでモジリアニやデ・キリコ、ブラックらの知己を得る。この楽しくもあった徒弟期間は第一次大戦で中断されるが、彼のデザイナーとしての才能は飛行機エンジンの部品の製図を描くという形で発揮された。戦後は故郷に戻って独自のスタイルの貴金属製品とジュエリーの製作に専念するが、やがて、当初は匿名であったが1925年のパリ万国博覧会を含む多くの博覧会に参加するようになった。彼のジュエリーは平面的かつ幾何学的で、各種のアゲートやマラカイト、ターコイズ、コーラルをマウントするかラッカーを施す点に特徴があるが、時代の精神に完璧に沿ったものであった。彼が創造する機械部品のフォルムをまとったジュエリーは大戦中のインダストリアル・デザイナーの経歴を物語る一方、フェルナン・レジェの絵画をも彷彿させるものである。突飛な素材の組み合わせも好み、それが1937年頃のセラミック・ジュエリー・シリーズの誕生へと至る。「ジュエリー界のピカソ」の異名を持つデプレはあらゆる博覧会に出展し、幾多の賞に輝いた。彼が創造したジュエリーは、アナトール・フランスやアンドレ・マルロー、アンディ・ウォーホールといった著名な作家やアーティストたちから高く評価され、コレクションすらされた。